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西先生のプロの園芸作業 | アルスコーポレーション株式会社
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プロフィール

西 良祐(にし りょうすけ)

大阪府立園芸高等学校教諭、甲子園短期大学教授、常磐会学園大学教授を経て、(社)フラワーソサイエティー名誉会長を勤める。 その他NHKテレビ「趣味の園芸」講師や財団法人川西市緑化協会理事、社団法人日本家庭園芸普及協会技術顧問など。

モモの移植
   

モモの移植


鉢植えのモモですが、写真のように落葉したので、移植してみます。モモの苗木の植付け・移植適期は落葉した11月中旬から12月中旬とされています。モモは落葉すると休眠に入り、早春に根の活動が始まるのです。
この株は「黄金桃」という品種で、地域によって違いますが来春の発芽は3月中下旬、開花は4月中旬が予想されます。そうしたことから来春の植付けでは、手遅れになるかもしれないので、この秋に行うことにしたのです。


さて、現在の状態ですが、苗木を園芸店で求め、根付けてから2年たちましたので、鉢底にかなり太い根が巻いているかと思いましたが、実際に抜き取ってみると、写真のように太い根がある程度でした。
しかし、このままにしておくと、細い根は太い根に圧倒されてしまいます。もちろん根詰まりになるのですが、根と枝には密接な関係があり、根の数・状態は、枝の数・状態に影響します。
少数の太い根が用土の中を占領すると、少数の徒長枝の発生につながり、小枝、特に下部の枝の衰弱枯死を引き起こします。鉢植えする場合には、下部の枝を繁らせて株を低く仕立てることが必要ですから、下枝の衰弱枯死は大問題です。

そこで、写真のように、鉢に接している根は切り戻し、特に太い枝は短く切り戻しておきます。切り口が大きい場合には、トップジンMペーストなど、切り口癒合促進剤を塗って腐敗を防ぎます。これで元の鉢に収めても、根鉢の周囲に新しい用土を補ってやることができ、当然新しい細い根が多数発生して、多くの枝を養うことができます。

根鉢が大きいので、株がぐらつくことはありませんが、不安定な場合には紐で株を鉢に固定し、新根の発生を順調にさせてやります。
根付けが終わったら、剪定をして樹形を整えます。根付けに先立って剪定を済ませたほうが、株の扱いは楽なのですが、作業の途中で枝を傷めては大変ですから。枝が長く、多い場合には結束しておくとよいでしょう。

剪定に際しては、しっかりした葉芽の位置を確認することが先決です。この株の場合は、ほとんどの枝に花芽と葉芽がついています。基本的には枝の先端部は葉芽で、中程から基部にかけて花芽がついています。写真のように花芽は白っぽくて大きく一つの位置に複数ついています。
さて、まず考えるべきは、全体の樹形でしょう。幸い枝は四方に出ていますので、将来、主枝となる枝は3本くらいとし、イメージとしては、各枝の横の角度は120度とします。

枝の切り戻しにあたっては、葉芽の位置のすぐ上で剪定すればよいのですが、この木の場合には、写真のように花芽の部分で切らなければならないようです。しかし、花芽の位置であっても、さきほどの写真のように花芽と並んで葉芽がありますから大丈夫です。ただ新芽生長は枝の先端部が一番旺盛で下になるほど弱まります。したがって、主枝としたい枝の場合には、伸ばしたい方向を向いている芽が一番上に位置するようにします。

この枝の場合は、細い枝ばかりですが、太い枝を切った場合には、ぜひ切り口癒合促進剤を塗っておきましょう。

モモの木は生育旺盛ですが、病気にかかりやすいことを念頭においておきましょう。残した主枝に強弱がありますが、来春は下の枝に実をつけず、右上の長い主枝に実を複数つけて徒長を抑制する予定です。


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