くだもの苗を盆栽風に!「果樹盆栽」のすすめ
小さな鉢やポットに果樹を植え付け盆栽サイズに仕立てる「果樹盆栽」は、ベランダなどの限られたスペースでも果物の収穫や鑑賞を楽しむことができます。
『果樹を植えるなら広い庭が必要では…?』と思われるかもしれませんが、「果樹盆栽」なら大丈夫。
今回は、ベランダなどの限られたスペースでも育てられる新しい果樹栽培のスタイル「果樹盆栽」の始め方や初心者におすすめの果樹を、樹木医でガーデニング研究家の畑明宏(はたあきひろ) さんの解説でご紹介します。
小ぶりに育てることでたくさんの種類を栽培することもできますよ。ぜひ、この機会に「果樹盆栽」でおうち果樹園を始めてみましょう!
《目次》
1.果樹盆栽とは?
2.果樹盆栽の育て方
今回は、はたさんとアルスが提唱する、ベランダで育てられる「果樹盆栽」をご紹介します!
果樹っていうと柿とか夏ミカンなどが一軒家のお庭にドーンと植わっているイメージなんですが…。
今回ご紹介する「果樹盆栽」は、ポットや小さな鉢植えで育てるので広いスペースはいりません。また、育てやすい果樹を選べば初心者でもおうち果樹園を楽しむことができますよ!
おうち果樹園、楽しそうや!
果樹盆栽とは?
果樹盆栽とは、本来大きく育てる果樹を小さな鉢やポットに植え付け、盆栽のように剪定しながら収穫と鑑賞をする新しい果樹栽培の楽しみ方です。
《果樹》と聞くと広大な果樹園をイメージする方も多いと思います。
広々とした果樹園に手入れされた果樹が整然と植わった光景を思い出すと、一般家庭で育てるときも『枝葉を広げるスペースが必要かも』『定期的な農薬散布が必要かな?』と考えてしまうかもしれません。でも、果樹を小さな鉢やポットで育てる「果樹盆栽」なら大丈夫です。
農家ではない一般家庭で育てる果樹を「家庭果樹」と呼びます。家庭果樹の楽しみ方は様々ですが、おうちで育てるなら1本の木から何百個も同種の果実を収穫するよりも、 数個ずつ色々な種類(品種)の果物を楽しみたいもの。
小さな果樹盆栽なら場所をとらないので、たくさんの種類(品種)を育てることも可能です。色々な果物が周年収穫できるって素敵ですね。実のつかない時期も盆栽として鑑賞できますし、箱庭的な愛らしさがとても魅力的です。
果樹盆栽は野菜などに比べ長く付き合えるのも魅力。ペットのように何年も一緒にいられますよ!
▼「西先生のプロの園芸作業」には果樹盆栽の記事がたくさん!
果樹盆栽の育て方
果樹盆栽の育て方は基本的に盆栽と同じです。サイズを保つため、盆栽と同じように2~3年に1回は鉢から取り出して(=鉢上げ)広がり過ぎた余分な根を1/3くらい切ります(=根切り)。そうすることによって、盆栽サイズを保つことができます。
果樹盆栽3年間の流れ(春スタートの場合)
1年目は果樹苗の出回る3~5月に苗を購入し、植え付けましょう。木が若い1年目の果樹は実がつかないこともありますが、問題ありません。盆栽として鑑賞を楽しみましょう!
2年目に入ったら肥料を与えたり剪定作業を行いましょう。こまめに剪定できるなら夏以外はいつでも軽剪定を行って問題ありません(春と秋にまとめて行ってもOKです!)。
夏は葉を減らすと蒸散量が減り熱中症状態になってしまうので、剪定しないようにしましょう!
果物の種類によっては 「摘果(てきか)」という実を間引く作業が必要な場合があります。例えばレモンであれば「葉30枚に対して実1つ」の割合にするなど、実の数を調整してください。
2年目の終わり頃、根が鉢底からはみ出している場合は鉢上げをして根切りをしましょう。※根がはみ出していなければ根切のタイミングは3年目以降でもOKです。
3年目以降は2年目の流れを繰り返しましょう。
▼果樹盆栽3年間の作業表(植物によって収穫時期等は異なります)
年 | 月 | 作業 |
---|---|---|
💡もし実がついていたら収穫 |
||
💡根が鉢底から伸びていたら根切りする |
||
※1.11~12月は土が乾燥しないため、水やりも行わなくてOKです。
❔「果樹盆栽」専用の品種があるの?
「果樹盆栽」は、通常の果樹苗を盆栽風に小さく仕立てるもの。特に専用の果樹品種があるわけではありません。ただ、果樹として本来大きく育つものを敢えて小ぶりに仕立てるので、果樹盆栽向きの果物とそうでないものがあります。
また、専用品種はありませんが、園芸店で売られているのは基本的に大きく育てる前提の苗木。果樹盆栽として小さく仕立てるのは難しい場合があるので、ネット通販で盆栽用に用意されているものを探すと上手くいきやすいですよ。
💡果樹盆栽の枝剪定には軽量・小型の剪定ばさみ「ミニチョキ」が便利
果樹盆栽で重要なのは枝を剪定し、サイズを小ぶりに保つこと。
そんな時に役立つのが軽量・小型の剪定ばさみ「ミニチョキ」です。全長185㎜と女性や手の大きくない方にもよく馴染むサイズで、刃にはハードクロームメッキが施されておりヤニ・シブに強い本格仕様。グリップには打ち合いゴムがついており、剪定時の衝撃を吸収する手にやさしい構造です。
また、「グリップの開き幅が大きすぎる…」という方のため、開き幅調整が可能になっています。ドライバー1本で手のサイズや作業内容に合わせて使いやすくできるので、とても便利ですよ。
カラー展開はホワイト、イエロー、ピンク、グリーン、バイオレットの5色。お好みのカラーの剪定ばさみで、楽しく果樹盆栽を剪定しましょう!
アルス国内工場で製造しています。 レーザーマーキングで名入れもできますよ!(オフィシャルショップで購入の場合のみ)
❔虫や鳥の被害は大丈夫?
少し心配なのが、虫や鳥です。ベランダで果樹を育てたら、たくさんやってきませんか…?
虫は露地に比べれば少ないですが、鳥はやってきますね。防鳥ネットやテグスでカンタンに防ぐことができますよ!
▼防鳥ネットやテグスを使った鳥対策についてはこちらの記事で!
実は「果樹盆栽」という言葉はまだメジャーではありません。ご家庭や会社でも気軽に育てられる果樹盆栽、これからドンドン広めていきたいですね!
果樹盆栽にオススメの果物
果樹盆栽は本来大きく育つ果樹を敢えて小ぶりに育てるため、果樹盆栽向きの果物と、そうでないものがあります。例えば栗や柿、リンゴのような果物は苗木から大きく、果樹盆栽にするのは不向きです。
また、果樹盆栽の中でも育てる果物によって実をつけるのに必要な樹高が異なります。ここでは、春からの果樹盆栽向きの小さく仕立てられる果樹を「樹高40~50㎝程で実がつくもの」「樹高70~80㎝程で実がつくもの」「樹高1mほどで実がつくもの」の項目でご紹介します。
●樹高40~50㎝程で実がつくもの
|ブルーベリー
育てやすい果樹の代表格であるブルーベリーは、果樹盆栽にもおすすめ。元々低木種であることに加え、ネット通販でも盆栽用が入手しやすいです。注意点としては、ブルーベリーは実をつけるのに2品種の苗木が必要です。詳しい説明はこちらの記事をご覧いただきたいのですが、苗木が1本だと実をつけることができないので、育てる際は、2本植えのものか、苗木を2本(2種)購入してください。
💡剪定&摘果のポイント
ブルーベリーの花芽(=いずれ実になる)は長すぎない枝の先端に付きます。先端部を切り詰めると実がなりません。長くなり過ぎた枝には花芽が付きにくいので、先端に花芽の付いていない長い枝を中心に剪定しましょう。また、ブルーベリーは摘果の必要はありません。
ブルーベリーなど実が小さい果物は、おおむね摘果なしで大丈夫です!
▼ブルーベリーの「果樹盆栽」の育て方はこちら!
|ヒメリンゴ
りんご飴でお馴染みのヒメリンゴも果樹盆栽として育てることができます。小さな木にちょこんとヒメリンゴがなっているのはとても可愛らしいですよ! こちらも盆栽のネット通販で入手しやすく、おすすめです。
💡剪定&摘果のポイント
空に向かって伸びる立ち枝や徒長枝には花が咲かないので剪定します。水平に伸びた枝から出る短い枝に花が着きやすいので、水平に伸びた枝の先端を剪定するようにしましょう。摘果シーズンはおおむね9月下旬~10月頃。木が若いうちに実をたくさんつけると疲弊してしまうので、1年目は多くて実は2個まで(苗木によっては1年目は実がつきにくいこともあります)、3年目で4~5個くらいを目安にしてください。それ以降はさほど注意しなくてOKです。
|ビルベリー(ワイルドブルーベリー)
ビルベリーはツツジ科スノキ属のいくつかの低灌木種(ていかんぼくしゅ)の総称で、ブルーベリーに比べて小粒の実がなります。ブルーベリーと同じく初心者でも育てやすく、果樹盆栽に向いています。
💡剪定&摘果のポイント
剪定のコツは、ブルーベリー同様、先端に花芽の付いていない長い枝を中心に剪定すること。先端部を切り詰めると実がならないので注意しましょう。摘果は必要ありません。
●樹高70~80㎝程で実がつくもの
|キンカン
小さな実が愛らしいキンカンは、実がつきやすく初心者にも育てやすい果樹。こんもりとした形に仕立てられて見た目にも可愛らしく、苗も入手しやすいので果樹盆栽におすすめです。
💡剪定&摘果のポイント
花芽は枝の部分に着きますが、長い枝には付きにくいので長くなった枝を中心に剪定しましょう。また、夏や秋に出る枝には花芽が付きにくいので発生したら間引き剪定しますが、切り過ぎると弱ります。注意しましょう。また、摘果は特に必要ありません。
▼大実キンカンの「果樹盆栽」の育て方はこちら
|ユスラウメ
庭木としてもよく見かけるユスラウメも果樹盆栽におすすめ。枝一杯に花芽がつき、初心者にも育てやすいです。小さな実がたくさん生るユスラウメはほんのり酸っぱく、生よりもジャムの方が食べやすいかもしれません。※食べ過ぎるとお腹を壊すので注意!
💡剪定&摘果のポイント
伸びすぎた枝や徒長枝を切り詰める程度の剪定でOKです。強剪定は好みません。枝いっぱいに花が咲くので、どこで剪定しても実が着きやすいです。摘果は必要ありません。
|サクランボ
なんとサクランボも果樹盆栽にすることができます。甘酸っぱいサクランボが自家製で楽しめたらとても嬉しいですね。「サクランボ + 盆栽」などで調べると苗の販売サイトが見つかりますので、ぜひ探してみてください。
💡剪定&摘果のポイント
垂直方向に伸びる枝より水平方向に伸びる枝の方が結実しやすいので、水平方向の枝を残すように剪定します。枝に針金を巻いたり糸で引いて水平方向に枝を誘引(ゆういん)するのも良いでしょう。サクランボも摘果は特に必要ありません。
|レモン
鉢で育てられる家庭果樹の代表・レモン。小さく仕立てれば果樹盆栽としても楽しむことができます。初心者でも育てられ、酸味があるため鳥の被害も受けにくく、ベランダ栽培も安心。自家製レモンなら皮ごと食べても安全なので、はちみつレモンやケーキ、お酒で丸ごと楽しめますよ!
💡剪定&摘果のポイント
花芽は枝の部分に着きますが、長い枝には付きにくいので長くなった枝を中心に剪定しましょう。また、夏や秋に出る枝には花芽が付きにくいので発生したら間引き剪定しますが、切り過ぎると弱るので注意しましょう。 摘果は「葉30枚に対して実1個」を目安に行ってください。
▼レモンの剪定についてはこちらの記事でもご紹介しています!
|シークワーサー
ミカン科の常緑低木のシークワーサーは、琉球諸島や台湾に自生する柑橘類。酸味のある爽やかな味わいが特徴のシークワーサーも果樹盆栽として仕立てることができます。
💡剪定&摘果のポイント
花芽は枝の部分に着きますが、長い枝には付きにくいので、長くなった枝を中心に剪定しましょう。また、夏や秋に出る枝には花芽が付きにくいので、発生したら間引き剪定してください。しかし、切り過ぎると弱ってしまうので注意しましょう。摘果は「葉30枚に対して実1個」を目安に行ってください。
●樹高1m程で実がつくもの
園芸店で苗木を購入する場合は、果樹盆栽として育てるには大きくなりすぎている苗もあるので、高さ1mくらいのものを選んでください。
|ぶどう(デラウェアorキャンベル・アーリー)
ブドウにはたくさんの品種がありますが、その中でも初心者向けなのはデラウェアとキャンベル・アーリー。デラウェアは食卓でもお馴染みの、粒のたくさんついたブドウです。キャンベル・アーリーはアメリカ生まれの黒ブドウで、果粒は5~6gとやや小ぶり。甘みと酸味のバランスがよく生でもジャムやゼリーにしても美味しくいただけます。
お店で売られている「デラウェア」は種無しにするジベレリン処理が施されているため種がありませんが、自家製の場合は種有りになりますよ!
💡剪定&摘果のポイント
伸びた枝の全域に花芽が付くので、冬の剪定では主幹部分まで強剪定します。ツルが伸びたらリング支柱にラセン状に誘引します。小さく育てるときは、さほど花芽がつかないので摘果は必要ありません。
▼「鉢植えブドウの誘引」はこちらの記事で詳しく解説しています!
ちなみに最近人気の「シャインマスカット」はまだ果樹盆栽を試したことがありません。 いつかやってみたいですね!
▼ブドウの「果樹盆栽」の育て方はこちら
|キウイフルーツ
グリーンとゴールドの果肉の、甘みと酸味がおいしいキウイ。実はキウイは病虫害に強く、比較的栽培の手間もかからないので初心者に育てやすい果樹。果樹盆栽にもおすすめです。キウイは雌雄別株なので、結実するには2本の苗が必要です。
はたさんオススメの掛け合わせ品種は、グリーン=「ヘイワード(雌株)×トリム(雄株)」、ゴールド=「ゴールデンキング(雌株)×孫悟空(雄株)」ですね!
💡剪定&摘果のポイント
花芽は付け根付近を除いて枝の全域につきます。全ての枝を切り詰めても結実します。成長が旺盛なので強めに剪定して大丈夫。小さく育てると、さほど実はつかないので摘果は必要ありません。
|ライム(タヒチライム)
柑橘類の一種であるライム。中でもタヒチライムは耐寒性が強く、日本国内でもよく苗が流通しています(特別な注意書きが無い場合の「ライム」はタヒチライムと考えてOKです)。低木で家庭果樹として育てやすく、果樹盆栽にもおすすめ。また、基本的に種が無く食べやすいのも魅力です。
💡剪定&摘果のポイント
レモン同様、花芽は枝の部分に着きますが、長い枝には付きにくいので長くなった枝を中心に剪定してください。また、夏や秋に出る枝には花芽が付きにくいので発生したら間引き剪定しますが、切り過ぎると弱るので注意しましょう。 摘果は「葉30枚に対して実1個」を目安に行ってください。
|イチジク
家庭果樹としてよく紹介されるイチジクも果樹盆栽として育てることができます。イチジクはクワ科イチジク属の落葉高木。生長が早く比較的手間もかからないので、初心者におすすめです!
💡剪定&摘果のポイント
イチジクには夏に実ができる夏果専用種、秋に実ができる秋果専用種、夏と秋に実ができる夏秋果兼用種があり、それぞれに適した剪定方法があります。
夏果専用種は前年に伸びた茶色の枝に結実するので、先端の花芽を残し剪定します。秋果専用種は春〜夏に発生した緑の枝に結実するので、その枝を残します。
夏秋果兼用種は本来夏と秋に実ができるのですが、果樹盆栽として育てる場合は秋収穫のみにしましょう。冬にしっかり剪定して夏には実ができないようにしてください。万が一できてしまった場合は夏の実は取ってください。
また、実が多すぎると木が疲弊するので、摘果して1~2個にしましょう。
どれも面白そうや…。
全部育ててみたい!
さすがに全部は大変だと思うけど、おうちの事情と相談して2~3種類から始めてみるのも良いでしょう! ぜひ「おうち果樹園」で果物狩りを楽しんでください!
今回のおさらいと次回の予告
今回は「果樹盆栽」についてお届けしました!
意外と小さく育てられる果樹が多くて驚きました!
はい、実はそうなのです! また、もし実がつかなくても果樹盆栽なら盆栽として鑑賞する楽しみがありますよ。
次回は「果樹盆栽の育て方②」をお届けします。お楽しみに!
▷次回【 果樹盆栽の育て方② 】につづく
新しい果樹栽培のスタイル、果樹盆栽。ご家庭で気軽に果樹を育てられるなんて素敵ですよね。そろそろ園芸店や通販サイトで果樹苗の販売が始まっています。ぜひこの機会におうちに果樹を迎えてみてはいかがでしょうか。
🐊アルスケの近況
アルスケもさっそくブルーベリーの苗をネット通販で入手しました。 はたさんに教わりながら、おうち果樹園ならぬ「オフィス果樹園」を目指してがんばるぞ!
こちらはまだまだ元気なエディブルフラワー・ビオラの砂糖漬け。パリッとしておいしいのです! ビオラは今からでも園芸店で入手できるので、ぜひエディブルフラワーとして育ててみてくださいね。
▼エディブルフラワーの育て方はこちらの記事で!
それでは、次回をお楽しみに!
📢 公式Twitter & アルスケinstagramでキッチンガーデンの様子を更新中!
◎ガーデニングにおススメ|Gクラシックシリーズ
上品な深いグリーンの持ち手で統一された、ガーデニング向け《Gクラシック》シリーズ。ご家庭での園芸作業に便利な刃物が揃っています。お求めは全国のホームセンター・金物店・園芸用品店や各インターネットショップで。
▼アルス商品はこちらからもお求めいただけます
\ はたさんとアルスケのチョキチョキライフ /
大阪堺の刃物メーカー・アルスコーポレーションのマスコット、赤いワニの「アルスケ」と、ガーデニング研究家のはたさん(畑明宏さん)がお届けする『はたさんとアルスケのチョキチョキライフ』。2020年はとある住宅街のマンションに暮らす「花坂さん一家」がアルスケとはたさんとの出会いをきっかけに、ベランダで“キッチンガーデン”に取り組む様子を描きます。