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西先生のプロの園芸作業 | アルスコーポレーション株式会社
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プロフィール

西 良祐(にし りょうすけ)

大阪府立園芸高等学校教諭、甲子園短期大学教授、常磐会学園大学教授を経て、(社)フラワーソサイエティー名誉会長を勤める。 その他NHKテレビ「趣味の園芸」講師や財団法人川西市緑化協会理事、社団法人日本家庭園芸普及協会技術顧問など。

環状剥皮
   

環状剥皮


作業前
庭木に仕立てているモモが徒長気味です。
果実の収穫が目的の果樹園と異なり、庭木は樹形が美しいことが最優先されます。
そこで今回は、来年の収穫は多少犠牲になり、危険も伴いますが、整姿と生育の調節を行いました。


間引き剪定 間引き剪定後
まずは間引き剪定です。間引き剪定とは、採光・通風を計るために、混み合っているところの小枝を整理することです。
基本的に、枝の生育は、上部のものほど旺盛で、下部になるほど弱まります。特に樹形作りにおいては最下部の枝、つまり一の枝を衰弱させないことが大切です。
この木の場合でも、一の枝はその上に伸び出した枝の繁茂によって、同化作用が妨げられ弱り始めているようです。
そこで、写真右のように、まず一の枝の上に混み合っている小枝を間引き、日光と風がよく当たるようにしてやりました。一の枝を中心に考えますと、もう少し空間を大きくとってやりたいのですが、この時期あまり枝を切り詰めますと、木はバランスを乱して徒長枝を多発させる危険があります。
環状剥皮中 環状剥皮後
次は、環状剥皮です。写真のように、2ミリくらいの狭い幅で樹皮を剥ぎ取ります。これによって、処理した枝の生長が抑制されます。
葉によって作られた養分は、樹液によって枝や幹を通り根に届けられますが、環状剥皮によって樹液は根に届けられなくなります。部分的に見ますと、環状剥皮をした部分から上の枝に養分が蓄積するので、枝にとって良いことのように思われます。
しかし、芽が伸び出すには、根から送られる生育促進物質(植物ホルモン)が必要ですので、これが届かなくなると、処理枝にとってはパニック状態が生じます。
この状態を続けますと、処理枝は衰弱枯死するので、一定期間を過ぎると環状剥皮をした部分が癒合し、樹液が再び正常に流れるようにしなければなりません。
それに配慮して、樹皮を剥ぐ幅を狭くし、癒合が確実になるようにしたのです。処理部には、保護のために保護剤のトップジンMを塗っておきました。
トップジン塗布 先端部摘み取り
最後に、上部の徒長枝の先端部を摘み取る程度でこの時期の調整を終えます。
と言いますのは、7月に入りますと花芽分化が始まります。花芽分化が行われる枝の状態としては、伸長が停止していることと、充実していることが大切な条件です。
今、強い剪定をすると、伸長を止めていた枝が伸び出してしまい、結果として花芽分化を妨げることになるのです。徒長している枝は「遊び枝」としておきましょう。
作業終了後 2月の強剪定時
参考までですが、この木の場合には結実がみられません。原因は、発芽前(2月)に基本的な樹地作りを優先した、強剪定をしたことです。それにより、木が元の樹形に復元しようと、栄養生長つまり徒長枝をたくさん発生させることを優先し、果実を育てることを後回しにしたようです。
このことは、花芽分化にも通ずることなので、これから落葉するまでは、樹形が乱れても強い間引きや切戻し剪定は避けて、花芽を正常に休眠状態に入らせてやりましょう。


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