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西先生のプロの園芸作業 | アルスコーポレーション株式会社
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プロフィール

西 良祐(にし りょうすけ)

大阪府立園芸高等学校教諭、甲子園短期大学教授、常磐会学園大学教授を経て、(社)フラワーソサイエティー名誉会長を勤める。 その他NHKテレビ「趣味の園芸」講師や財団法人川西市緑化協会理事、社団法人日本家庭園芸普及協会技術顧問など。

リンゴの剪定と挿木

リンゴの剪定


数年前に入手したリンゴですが、
ラベルが落ちて品種が分からなくなってしまいました。

一度結実したことがあって、
果実の特徴から「ふじ」ではないかと思っています。

今回はこちらのリンゴの木の、
剪定・挿木・誘引・取木作業を行いたいと思います

剪定するにあたって枝をよく観察しますと、
三種類の枝が伸びていることが分かります。
ひとつひとつ、見てみることにしましょう。

リンゴの剪定

【台木から伸びている枝】

赤色のマルで囲んだ部分は台木から伸びている枝です。
(台木は地下部に埋まってしまい見えていませんね・・・)

【リンゴの枝】

リンゴの剪定


オレンジ色のマルで囲んだ部分から出ている枝は、
明らかに先ほどの枝と違い、いわゆる「リンゴの枝」となっています。

【ふじ(リンゴの品種)の枝】

ふじ(リンゴの品種)の枝


黄色のマルで囲んだ部分は
「ふじ」というリンゴの品種の枝となっています。

一つの鉢からなぜこのような3種類の枝が出てくるのでしょうか・・・
それはこの木が2度接木されているからです

接木とは・・・
主に果樹や花木で行われる繁殖方法。
他の植物の体(台木)に品種の違う穂木を接ぐことが基本的な方法です。

このリンゴの苗では、その接木が2度行われています。

ひとつめはここ

リンゴの剪定

赤色のマルで囲んだ部分に、横線が入っているのがわかるでしょうか。
ここが、接木部分です。

リンゴの剪定

もうひとつがここです

ぷくりとコブがあり、その上の赤色のマルで囲んだ部分に横線がありますね。
ここが、2つ目の接木部分です。

接木部分より上は、リンゴの品種「ふじ」の木となっています。

「ふじ」という品種からすれば、
これは中間台木に接木されている状況です。

そしてこの「中間台木」の勢いが強いため、
接木部分はふくらみコブになっています。

なぜ「中間台木」を用いたのかということですが、
まず考えられるのは「ふじ」を矮化(小形化)させるのが目的で
「矮性台木」を台木に接いだということです。

そのことは「ふじ」の樹形作りでわかることでしょうし、
「中間台木」の果実からも分かることでしょう

もうひとつは、「ふじ」の受粉樹となる品種を
「中間台木」とした場合です。

「ふじ」の受粉樹としては、
「王林」、「陸奥」、「つがる」などがよく知られています。

こうした一つの株に二種類が接木されたものは
「アベックフルーツ」として家庭園芸で人気があり、
通信販売のカタログにも記載されています

いずれにしてもこの「中間台木」は大切で、
もし「アベックフルーツ」であれば楽しみですから、
枝を大切に育てることにします。

このリンゴの鉢ひとつの中に、物語がいっぱい詰まっていますね!
観察を終えたところで、本日の作業を開始しましょう。

● ● ● ● ● ● ● さあ、やってみよ~!● ● ● ● ● ● ● ● ●

健康診断

リンゴの剪定


枝をみてみますと、残念ながら幹に傷があり、
そこから樹液が染み出しています。

カミキリムシの幼虫が侵入しているのかもしれません

穴から専用の殺虫剤を注入してきます。


主枝の剪定

剪定作業は、下方の枝から行うのがポイントです。

まずは、台木を根本から飛ばします

リンゴの剪定

その他の枝は、外側に向いている芽の上で剪定します。

リンゴの剪定

挿木作業

台木からでた枝を用いて挿木を行います。

ミツバカイドウとマルバカイドウがありますが、
最近はもっぱらマルバカイドウが用いられているようです。

今回の台木もきっとマルバカイドウと思うのですが、
それを確認するためにも、挿木をしてみます

見分け方としては、
〇ミツバカイドウ・・・挿木しても根がでない
〇マルバカイドウ・・挿し木したら根がでる

わかりやすいですね!

さて、作業の方法ですが
まず剪定した台木の枝を水にひたします。

リンゴの剪定


穂木の長さですが節の下5mmを目安にまず切り、
全体としての長さは15cmほどのものにします。

リンゴの剪定

穂木を挿すための挿し床作りですが、
鉢に赤玉の細土を入れ、さきほどのバケツにつけ込みます。

この時期の挿木では、霜柱で挿穂が浮き上がることがあるので、
鉢は大きめで排水の良い深鉢がおすすめです

リンゴの剪定

鉢のへりから1cmくらい内側に
穂木を挿していきます。

土への差し込みは穂木の3分の2が
埋まるくらいにしましょう。

リンゴの剪定

これで、水から鉢を上げれば
穂木がしっかり固定されています。

リンゴの剪定

かっちり!これにて挿木作業はOKです。

誘引作業

この木の場合には、
主枝を左右に広げ扇状に平面的なものに仕立てます。

理由は樹形づくり(剪定整姿)が簡単で、
それに場所をとらないので、
狭い庭でたくさんの株を育てることができるからです。

誘引作業ですが、平面的なものにするために枝を
麻紐でくくります。

リンゴの剪定

その他の枝も同じように誘引していきます。
また、側面の枝は支柱を立てて誘引作業を行いました。

リンゴの剪定

取木

最後に取木作業を行います。

取木とは・・・
植物の人工的繁殖方法の1つです。
茎の途中から根を出させ、そこで切り取ることで新たな株を得ることができます。

まず、はさみを使って地際とその上1cmを
形成層の部分までそぎ落とします

リンゴの剪定


あとは、そぎ落とした部分が隠れるくらいまで
赤玉中粒または小粒を鉢に入れます。

リンゴの剪定

これにて取木作業はOK!
本日の作業もすべて完了です

リンゴの剪定

全体をみてみると、すっきりとした鉢になりましたね。


『 リンゴの剪定と挿木 』に適した刃物
麻紐のカットや細い枝の剪定、取木作業では、クラフトチョキを使いました◎
多用途はさみの名前そのもの、さまざまな場所で活躍してくれます
ソフトグリップなので長時間でも手が疲れにくいです。


また、太い枝の剪定ではミニチョキを使用しました。
軽量ながら刃が大きく開き、切れ味抜群です。

軽量小型剪定鋏 ミニチョキ


軽量小型剪定鋏ミニチョキ

軽量小型剪定鋏ミニチョキ

★★★今日のひとこと★★★

本日は昨年9月に取木をしたユスラウメのその後をご紹介
▼ユスラウメの取木の様子は、こちらの記事の後半でご紹介してます。
〇こちらからどうぞ〇
現在はこんなかんじ。

ビニールを剥すと・・・

無事に発根していました~~~!

蕾や芽のバランスを見ながら剪定

鉢に植えれば、あらたな株として育てることができそうです

西先生のお庭にて蕾のふくらみを発見。
春はすぐそこ・・・と嬉しくなった1号でした


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