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西先生のプロの園芸作業 | アルスコーポレーション株式会社
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プロフィール

西 良祐(にし りょうすけ)

大阪府立園芸高等学校教諭、甲子園短期大学教授、常磐会学園大学教授を経て、(社)フラワーソサイエティー名誉会長を勤める。 その他NHKテレビ「趣味の園芸」講師や財団法人川西市緑化協会理事、社団法人日本家庭園芸普及協会技術顧問など。

秋の施肥
   

秋の施肥


モモの秋枝 芽摘みによる徒長の抑制
モモの秋枝・芽摘みによる徒長の抑制

◇秋の果樹の診断
来春に開花結実する果樹は、この夏に花芽分化し、秋にかけて発達するのが基本的なパターンです。
自然環境では、出来上がった花芽は一旦休眠状態に入り、冬の低温が引金となって休眠が破れで、開花へと進みます。
しかし、気温の高い時期(初秋)に台風などで、葉が奪われるようなことがあると、そのショックが引金となって開花してしまうことがあります。
(新聞などで「秋にサクラが咲いた」などの記事がみられるのは、このパターンであったりします)

◇秋の管理

管理面から考えますと、木が落葉するなど、完全に冬越しの状態に入るまでは強い刺激を与えないように心掛けます。
庭植えの場合には、樹形を乱している徒長枝を切り戻したいところですが、落葉期まで待ってやりましょう。
またこの夏は雨が少なく、枝葉の繁茂が抑制されましたが、台風襲来からはかなり雨に恵まれて元気回復し、萎れがちであった枝の先端に新芽(秋枝)が伸び出しているのを見かけます。
この枝は充実しないままに冬を迎え、多くの場合は凍傷を起こすか、そうでなくても充実不十分で、春に満足な新枝を伸ばす力がないので、本剪定で摘み取っておかなければならない枝です。
理想的には、春から初夏にかけてしっかりした新枝が伸び出し、夏から秋にかけて充実し、冬に休眠状態に入るといった生育をさせたいのです。

◇秋の施肥の効果
秋の施肥は、恵に感謝の意を表して「お礼肥」と呼ばれます。
春から夏にかけての生育が旺盛な時期には、葉の状態から健康状態を容易に判断出来るのですが、落葉期には栄養不足の判断が難しく、来年の順調な生育のスタートをさせてやれないことがあります。
特に果樹の場合は、果実に養分を奪われるので木の負担が大きく、衰弱している木が多いものです。
具体的に見ますと、今年過日を着けた枝は衰弱して、来年の結実を期待できないということです。そこで、来年の充実した生育に備え、秋に、鶏糞・油粕・骨粉などの有機質肥料を施しておきます。
有機質肥料は、微生物によって緩やかに分解されてから、水に溶けて根に吸収されるので、施肥をしても直ぐには効きませんが、秋に施しておくと、来春の新枝の生長に役立ち、しかも長期間の肥効が期待できます。

◇施肥の要領
お礼肥は、根本に与えますので、時としては根を切断してしまうことがあります。
基本的には、根を傷めないように施肥をするのがよいのですが、先に述べたように秋枝が多発するような場合には、一部の根を切ってやることにより、徒長を抑制することが出来ます。
ただし、これは木に大きなダメージを与えるのではなく、ショックを与えるのが目的なので、太い根を切るようなことはせず、切り口は、よく切れる刃物で切り戻し、出来れば切り口保護剤などを塗ってやり、新根の発生を促してやりましょう。

お礼肥 お礼肥
お礼肥:約30cmの穴を掘り、状況により断根し、発酵鶏糞約5リットルを施肥

液肥の散布(鉢内土壌) 液肥の散布(葉面施肥)
液肥の散布(鉢内土壌&葉面施肥)

肥料は春から夏に与えるのが基本ですが、果実を着けている鉢植えの場合には、どうしても栄養不足になり、葉が黄色味を帯びていることが多いものです。こうした場合には、速効性のある液体肥料を与えて、株の充実を図ってやりましょう。
液体肥料の場合、希釈倍数に十分な注意が必要ですが、「ストレート液肥」「花工場スピーディー」など、直接施肥できるものが市販されています。
速効性で、施肥してから約1週間で吸収され、肥料切れになりますので、秋枝の発生を促す危険性を、あまり心配しなくて済みます。特に葉面に散布して有効な肥料は、更に効率的な管理が出来ます。
なお、果樹を庭木とした場合、モモなどの若木は徒長して樹形が乱れやすいので、断根したり施肥を控えめにするなど、引き締めた生長をさせるように心掛けます。


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