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西先生のプロの園芸作業 | アルスコーポレーション株式会社
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プロフィール

西 良祐(にし りょうすけ)

大阪府立園芸高等学校教諭、甲子園短期大学教授、常磐会学園大学教授を経て、(社)フラワーソサイエティー名誉会長を勤める。 その他NHKテレビ「趣味の園芸」講師や財団法人川西市緑化協会理事、社団法人日本家庭園芸普及協会技術顧問など。

モモの模様木仕立て

 


今月の主役の植物「モモ」です。
大鉢に植えておいたのですが、
油断していたので写真のような姿になりました。
果樹栽培姿としては全く失格でしょうが、
この「クセ」のある樹形を活かして鉢栽培果樹、
出来れば果樹盆栽仕立てへの挑戦を試みることに致します。

「樹形」には大別して、
①直線的な「直幹仕立て」と②「模様木仕立て」とがあります。
違った言い方をしますと「直線構成」と「曲線的構成」ということになりましょうか。

また、植物には固有の個性や雰囲気があるように思います。
今回は「盆栽風仕立て」を試みますので、植物の特性をまずチェックしておきましょう

季節の際の植物での飾りを考えてみますと、
まずお正月では松や梅が浮かびます。

それは【きりっ】としたものですが、
この季節のモモは【ふっくら】としたものが浮かんできます。
それを樹形にしてみよう、というのが今回の試みです
最初に少し、どのように樹形を決めればよいのか、
そのポイントをご紹介。
今回のモモの場合は、「模様木仕立て」にします。
これは議論したわけではなく、
樹形の決定は「根張り」と「立ち上がり」から決めるのが自然。
この木の場合、「立ち上がり」が直線的ではないので
「直幹仕立て」は不自然ですから、模様木仕立てにしよう、ということです
樹形作りでは“統一”ということが大切です。
「直線構成」とするか「曲線構成」とするか、首尾一貫しておきましょう。
それでは、目標とする樹形を決めて、本日の作業をはじめましょう。

さあやってみましょう!

1.直線枝の剪定

現在の様子ですが、下の写真のように、基部で二つにわかれています。

赤丸をつけた部分が直線的に伸びており、
モモの【ふっくら】とした印象をさまたげているようです
そのため、まず直線的な枝を切り落としていくこととします。

これで、直線的な部分を切り落とすことができました

2.鉢のコンパクト化

曲線的な構成につくり直すとともに、
鉢のサイズをコンパクトにし、若返りを図ることとします
まず、現状の鉢から取り出します。

そして、剪定鋏等で根を切り、
コンパクトにしていきます
はさみは土を切ると刃が傷んでしまいます
根切りの際に使うはさみは、新品のものではなく
使い古しのものを選んでくださいね。

剪定鋏などで切ることができない
太い根は鋸をつかって切りました。

新しい鉢に入れてみると・・・

すっぽり!赤玉土を入れて、土の容積を調整しました。
全体の様子をみると、こんなかんじ。だいぶすっきりとしましたね

3.徒長枝の剪定

全体を見渡すとコンパクトになりましたが、
まだ徒長枝が直線を描き、【ふっくら】と印象まで
あと少しというところです。
そのため、直線的な徒長枝も剪定することとしました

だいぶ曲線的なイメージに近づいてきました。

4.果実を養うための方法

容器栽培では、露地栽培と違って葉数が少ないので
果実を養うのは一苦労です
ポイントは小果の品種を選ぶこと。
そして、生理的落果の少ない早生の品種を選ぶことといえるでしょう
ここでは、結実を上手に促す作業として2つご紹介いたします。

【誘引】

一般的に誘引とは、
ツルや茎を支柱などに結び付けることによって、
生長の方向や姿のバランスなどを調節する役割をもちます。
今回は上方向に伸びた2本の枝を下に誘引。

上へ上へと伸び大きくなろうとする枝を
下方向に誘引すると、植物は「成長できない!子孫を残さなくては。」と
結実へと向かう傾向となるのです。

【芽摘み】

前述しましたが、容器栽培にて果実を養うのは
大変な負担のかかる作業です。
そのため、あらかじめ結実させる実を決めておき、
その他の花芽は摘んでおくのも一つの方法です。
花芽は、葉芽を取り囲むように左右に付いています。
花芽が将来の果実となりますので、
花芽のみをそぎ取り、葉芽は厳選した果実を養ってもらうため
残しておいてくださいね

▲赤い丸がついているのは花芽。

花芽をこそぎとります。
最後にかたちを整えて、本日の作業は終了です。

直線的で強いイメージから、
コンパクトで曲線的なかたちにかわりましたね。
これから実をつけてくれるのが楽しみです。


『 モモの模様木仕立て 』に適した刃物

枝の剪定ではミニチョキを使用しました。
軽量ながら刃が大きく開き、切れ味抜群。
お花屋さんでも愛用されているハサミです。

軽量小型剪定鋏 ミニチョキ

軽量小型剪定鋏ミニチョキ


軽量小型剪定鋏ミニチョキ

★★★今日のひとこと★★★
取材日はころころと天気が変わる日。
雨が降ってきたー!と思えば、日が差し、
あられに変わった・・・と思えば、ぴたりと止み。
一時はどうなることかと思いましたが、
なんとか全ての作業を終えることができて、ほっとしました。
いよいよ春の幕開けですね!
コートを脱いで、たくさんお出かけしましょう


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